小学4年生の頃であっただろうか。
その日父はオレンジのポロシャツを着ていた。
僕の父はオレンジ色に目がない。
その夜、庭に面したドアからサンタクロースが
プレゼントを持ってやってきた。
目が痛くなる程赤い衣装にシミひとつ無い白い髭を蓄えたサンタだった。
そして首元には例のオレンジ色の襟が見えたのだ。
こうして僕はサンタクロースがいない事を知った。
翌年からは玄関先の木にプレゼントが置かれるスタイルに変わったのだった。
蜂蜜漬けにされて育てられた僕であるから、
高校3年位迄はクリスマスのプレゼントがあったと思うのだが
それ以降の12月25日はただ街が混むだけの日に変わって行った。
確かディズニーのアニメであったが、
サンタが子供達におもちゃを届けるというものがあった。
幼い頃このアニメが大好きで年中見ていた。
その中でサンタ宛に欲しいものを何十個も書いて寄越した子供がいるのだが
その子は5年だったであろうか耳の裏を1度も洗っていないという理由で
石鹸をプレゼントにされてしまう。
初めてこれを見た日の風呂では、いつもに増して
入念に耳の裏を洗ったことを記憶している。
*リンクを見つけたので末尾にて
日本では年末年始で言えば正月が一番の催しだが、
特に欧米ではクリスマスの方が重要なイベントである。
年賀状代わりにクリスマスカードを送り合うし
御節の代わりにターキーを食べる。
浮浪者ですら白いポンポンのついた赤い帽子を被り
アグリーセーターに身を包んでいる。
後片付けのことを考えると、全くに気の進まない
クリスマスツリーは、門松といったところであろうか。
一年良い子にしていた子供には
サンタクロースが来るが、
悪い子だったものにはクランプスという山羊と悪魔が
合わさった怪物が現れ子供を攫っていくと言われている。
スイスの友人宅にはブギーマンというこれもやはり怪物が来て
子供を攫っていくそうだ。
これを聞いた僕は、幼稚園の頃であっただろうか、
節分の際に突如現れた鬼に驚き、
知らない母親の足に飛びついて泣いていた事を思い出した。
その時、僕の母はというと鬼に扮して
僕のことを脅かしていたということを後日知ることになる。
今年のクリスマスは恐らく同居人の老人を過ごすのだが、
彼はあまりクリスマスを好まない。
恐らく独り身で、家族も近くにいない為、
さして良いものでは無かったのであろう。
そんな彼に作った事も無いターキーと
ムルドワイン(日本ではホットワインと呼ばれている)、
そして少し良い石鹸でも贈ろうかと考えている。
”大事な人を数えていたら結構たくさんいて
そんな自分は照れるほど幸せだなって思った
今夜会いたい人だってやっぱりたくさんいて
もしも雪が降ったら電話代すごいだろうな”
槇原敬之/雪に願いを