過剰広告

口で言えば済みそうな注意書きが

所狭しとそれも力強く張り巡らされている月島の銭湯に居た。


女湯と男湯が

交代制になっていて、

1つには露天風呂が付いているが、もう1つには付いていない。


こじんまりとしていて、

5人も湯船に浸かれば

溢れてしまうような場所である。


へきへきとしてしまった僕は、

湯疲れか、口煩い注意書きのせいかどっと疲れた。



当たり前だけれども、

日本には日本語が

溢れかえっていて、

過剰な程にそれが

至る所にあって、

考える余地だったり、

受け手の気持ちなんてものは

無視されている。


それにまた僕は

馴染んできていて、

最近は書きたい事なんかが

全くない。


僕が考えている事は

全てその場で処理されてしまうし、

改まって何かを書き残す必要性がない。



星の話だったり、

最近観た映画の話、

日本で思った事を

少しずつ書いてはいるのだが

全く指が進まないし、

38度くらいのぬるま湯に

浸かっているようである。

適温でずっと浸かって居られるが、

徐々に水温は下がって、

やがて風邪を引くのだ。

そんな感覚を覚える。

下書きにぞんざいに埋もれている彼等はまた時を見て書こうと思う。




大した事もしていないくせに、

忙しさばかりにかまけていて、

湿度のせいか流れている空気にも、

少しだけ片栗粉を溶かしたような、

どろっとした質感のある雰囲気がある。





旧友が言う。

『ここにいる日本人には、ロマンチックを楽しむ余裕が無いのよ。』






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"お別れの時だよ君とはいれないな

2人だけの秘密は全部日々に溶けたよ

いつかまた会えたら聴いてはくれないか

陽気な歌でも歌うから愛していたよ"


お別れの歌/Never Young Beach