アルコール度数6%のエッセイ8

 


今ここで栞を挟んで決まったらもう2度と開くことはないんだろうなと思うような本がある。これはその本がつまらないとかそういうことではなくて、読み手である僕の問題なのだろう。そんな本を片手に、ぞんざいにページを捲りながらフラットアイロンのステーキを待っている。真夏日のパリからこれまた真夏日のロンドンへ戻ってきた。

日曜にたまに行く空調も中庭もない夏にはとても適しているとは言えないパブにいる。

 


何かしらの魔力とも呼べるような目には見えないベールを纏ったパリをユーロスターで無理やりにこじ開けて帰路についてみると、そこに確かにあったようなものは、綿菓子を水に溶かすように消えて無くなるのである。しかしながらその水を舐めてみるとはっきりと砂糖の甘さを感じることが出来る。

覆水は盆には返らないが、無くなる訳では無いのだ。

今僕の手元に届いた幾許か焼き過ぎたステーキも食べてしまったらそれでおしまいでは無くて、僕の血肉になるようなそんな気持ちである。

 


今日聴かなくていつ聴くのだと思うようなマックデマルコも霞んで聞こえてくるのは疲労感からだろう。

 

 

 

帰り道オフライセンスに寄ってみたものの、こちらのハーゲンダッツは1人で食べ切るには少々大き過ぎるのである。

 

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飲酒量:パイントビール1杯