雨上がりのパリは好きだ。
橙色の街灯が濡れた道を照らしては滲んで排水溝に流れ込んでいる。
パリへの拒絶感もその明かりに溶けて流れてしまう気がする。
ヨソモノ扱いされていたこの街にも通い続けること5年、まだまだヨソモノながらにもそれでも少しは受け入れてくれている気持ちになるのは仲良くしてくれる客のお陰なのかもしれない。
なにせ1日600件ものメールを1年間送り続けて残った数少ない客な訳で、僕にとってはかけがえのないものであることに変わりはないのだ。
遡ること5年くらいか、まだ何者でもなかった僕は(では今何者なのかと問われるといまだに何者でもない訳であるが)、パリで行われる僕の業界では世界で1番の展示会を見に行った。
東京ドーム何個ぶんあるのだろうか(そもそも単位が東京ドームとか地方出身の僕らには計りかねるのだ)、とにかく広い会場で、名だたる世界中の生地屋が軒を連ねているのだ。
5年後の今、僕はその展示会に今度は出展者として立っている。
実際立ってみると大概のことがそうであるようになんてことはないのだが、それでもここに出展出来るくらいにはなったのだなと思う訳である。
培ったこと、経験したこと、とても辛かったことや嬉しかったこと、易い表現だが、たくさん打ってきた点が薄く線として繋がった気持ちである。
あいにくパリにうってつけの曲を持ち合わせていない僕は、くるりの京都の大学生を聴きながらそう思ったのだ。
5年前のその会場にて26歳の僕
飲酒量:ビール2杯とスキンコンタクト1杯