英国退屈日記『帰国』

シャインマスカットの佇まいが

美しいと思えるのは味を知っているからか、それとも例え中身が酸っぱくとも

美しいと思えるのか、

そんなことをホテルの中で考えていた。

恐らくこの果物が僕にとって一つの幸福と

分かっているからこれは美しいのだろう。

外見の美しさは中身に起因する事が多い訳である。

この葡萄は山梨に旅行に行った母からの贈り物だった。



1年振りに帰国している。

時差に滅法弱く、

いつもこれに苦しめられるのだが、

ヤマさんの優しさか、

僕に時差ボケを感じさせる暇がないくらい

仕事が入っている。

着いた当日にすぐ商談、

翌日はクライアントの展示会、

その次の日からは名古屋、広島、大阪と

23日の出張が待っていた。


清潔さが誇張された

ビジネスホテルのシーツに

久しぶりの感覚を覚える。

小振りなグラスに付いた水滴に

郷愁を覚える。

空港を降りてすぐには馴染めなかった

ふわっとしたあの感覚は湿気のせいか。


兎に角、沢山のことを忘れている。

エスカレーターの左に並ぶとか、

Suicaのチャージには

クレジットカードが使えないだとか、

イヤホンを着けながら踊ってはいけないだとか。


かぶれたといえばそうなのかもしれないが、

それよりも日本の詳細まで

覚えておくことが出来なかったくらいに

容量の少ない僕の頭は一杯になっていたという表現が正しい気がする。


ビザ次第なところがあるのだが、

恐らく10月末頃までの滞在になる予定である。

たくさん会いたい人がいるし、

整体とかエステとか温泉だとかの

メンテナンスにも時間を取りたいし、

鰻ととんかつが食べたい。

ピザとパスタにはあまり誘わないでください。ケバブは見たくもありません。


今日の1曲は東京を題材にしたものが

良いのかと思う。

数多ある東京ソングだが、

今回はこれかな。


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"東京の街に出てきました 

相変わらず訳の分からない事を言ってます

恥ずかしい事無いように見えますか

駅でたまに昔の君が懐かしくなります


君がいない事君と上手く話せない事

君が素敵だった事忘れてしまった事"


東京/くるり