雑多な手記として

 


良い映画を観た後のような清々しい朝日を浴びたミラノのチェントラーレ駅の前で、まだ僕は眠い目をしている。

 


いろんなところへ行けて良いねとよく言われるのだが、基本的に自分のベッドに居る時間をいかに確保出来るかが人生の宿命のような生活を送っている僕にとっては(オーダーメイドで枕を作るくらい本気なのである)、仕事で行く海外は気が滅入る時間そのものである事が多い。

 


ミラノは表現することが難しいくらいこれといって特徴がないのが特徴である。

まだフィレンツェとか南の方はイタリアらしさがあって良いのだが、この街は中途半端な発展とローマ時代の遺産がチグハグに混ざり合っていて取り止めがないのである。

 


ラ ラテッリアのレモンパスタと、

ロカンダ ペルベリーニのティラミス、

それとオステリア コンチェッタのリゾット。

 

 

 

 

 

 

、、、ここまで書いてぶっきらぼうなメモ帳の中に埋もれていた。

書いたのは1ヶ月ほど前か。

なにを言いたかったのかすら思い出せない。

半年に1度訪れるマグロ漁船や蟹工船を連想させる体力勝負の出張期間を終え、

それらの後処理に自宅で追われてた。

外界からの刺激を受けないこの期間は、

僕の心持ちも暗室で育てられるもやしのようにか細く色白のものになっていた。

 

 

 

そうこうするうちに日本行きの日程がが迫り、また僕は5ヶ月ぶりに機内でスカイワードを広げている。

 


僕の座った席の液晶が壊れていて、

映画も観れず14時間を持て余し、

続きを書いている訳だ。

 


この前取引先の同い年と夕食を取って、

そのあとホルボーンにあるバーで軽く酒を煽っていた。

分からないからと言い、

彼はメニューの2番目に書かれていた赤ワインを頼む。

僕は彼のこういう所を好いている。

言い換えるならばワインのなにそれを話す男が嫌いなのだ。

マッカラカンが無かったので代わりに僕はヴァルベニーに頼んだ。

ロックでアイスは6個である。

拘りに卍固めされている僕に比べて、

彼は軽やかで良い。

 


仕事の愚痴を肴に飲んでいると、

ふと彼がこう言うのである。

 


人類始まって何千年と経っていて、

その歴史で結婚というものを恐らく何億回と繰り返してきたはずで、それでも人類として結婚というものに答えが出ていないというのが答えなのではないか。

そもそも昔は13-15歳くらいで結婚して、

たかが30年ほどの寿命のうち、15年くらいを共に過ごせば良かったわけだが、

今は80-90歳くらいまで生きる訳で、

昔とは様子が違うのだ。

制度として破綻しているのではないか。

3組に1組が離婚する世の中で、

一生添い遂げられる方がよっぽど貴重でしょう。

 


彼は既婚で今年の夏から妻もロンドンに来るとのことだった。

そんな彼が話す結婚観は現実味や重さがあってそれでいて明るく光って聞こえた。

 

 

 

人は夢や希望、恋や愛、友情など定かでないものしか歌わないのである。

 

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昔あった国の映画で一度観たような道を行く
なまぬるい風に吹かれて
今 煙の中で溶け合いながら探しつづける

愛のことば
傷つくこともなめあうことも包みこまれる

愛のことば
溶け合いながら 溶け合いながら

 


愛のことば/スピッツ